読書ノート「共感する女脳、システム化する男脳」
たまたま別の本を読んでいたら,サイモン・バロン=コーエンに取材をして,この本のことが紹介されていたので読んでみました。
サイモン・バロン=コーエンといえば自閉症の「心の理論」で有名で,大学院時代にはゼミで原著を翻訳しました。(苦労しました。)
そのサイモン・バロン=コーエンが書いたちょっと衝撃的な本はともすると,ステレオタイプ的に女の人は必ず共感に優れていて,男の人よりも人の気持ちがわかるということではないと,本書の中で何回も注意書きがあり,統計的なデータとして,女の人の集団とお所人の集団で比べると差異が出るとのことです。
ここで述べている「共感」とは「他の誰かが何を感じ,何を考えているかを知り,さらにそれに反応して適切な感情を催す傾向(11ページ)」とあり,「システム化」とは「システムを分析,検討し,システムのパターンを支配する隠れた規則を探りだそうとする衝動や,システムを構築しようとする傾向(13ページ)」と書かれています。
そして,女性型の脳は共感に優れている傾向があり,男性型の脳はシステム化にすぐれていて,その傾向は文化の影響も多少はあるが生物学的な要因が大きいのではないかと述べています。
特に,胎児期にテストステロンが多いと男性型脳(システム化)する傾向が多く見られています。
そして,極端な男性型脳として自閉症やアスベルガー症候群があるのではないかと書かれています。
たしかに,自閉症やアスペルガー症候群の人に共感がよく働かなかったり,システム化に優れている人も多く,1つの考えとしては納得いくところです。
自分自身を考えてもアスペルガー傾向があると思うとともに,共感能力の弱さや物事を,システム化して考える傾向があるように思います。
ただ,ここでもサイモン・バロン=コーエンが気にしているのは,胎児期の微妙な量のテストステロンを調整し,男性型脳を調整することが本当に良いのかと疑問を持っています。
本書では「能力の小島」と書かれている人など,特異な力を発揮する人ばかりでなく,システム化する力が役立つ人も多いはずである。
ただ,やはり多くの人は共感とシステム化がバランス良くなっているが,極端なシステム化が強く共感する力が弱い人は社会で困難を抱えるのに,極端な共感能力が高く,システム化がとても弱い人はあまり社会では困っていないのではと書かれているのはとても興味深かった。
さて,システム化と共感は相反する関係ではなく,マトリックスの関係にあるようです。本書の262ページにその図があるので,分布モデルはそれを参考にして下さい。
300ページ超の長い本ですが,くり返し同じことも書かれているので,要領よく読めば1日で概要はわかると思います。
最後のページにはテストもついていますが,これはあくまで本書を理解するためのもので,スクリーニングのためではないと注意書きがあるので,使い方は気を付けた方がよいでしょう。
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